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戦国BASARA2の前田慶次受け語りログ。
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愚流里のちこさんに捧げたよしきさっつーか金喜っつーか。
取り敢えず、よしろー先輩を想う喜三太とそれに訳が分からず嫉妬する金吾が書きたかったんだ!
よしきさいいよねよしきさ!!もう本当に可愛い!!




【大好き!!】





本日の剣の修行を終え、ゆらりゆらりとふらつく自分の師匠を食堂まで送り届け、ついでに食堂のおばちゃんにお願いしてやかんを火にかけてもらった。
今日は一段と寒いからねぇ、金吾君も毎日偉いわねぇと褒められる言葉に悪い気がするはずもなく、「日課ですから」と答えると、今日だけ特別だと作りたてのお饅頭と、二つ分の湯飲みも一緒に渡された。
首を傾げると、「喜三太ちゃんの分も持って行くつもりだったんでしょう?」と言われ、見透かされている行動に顔を赤らめる。
食堂のおばちゃんと未だに机の上で動けず項垂れている師匠に元気よく礼を言うと、裏口から外に向かって飛び出した。
瞬間、一陣の風がビュッと顔を撫いで、去っていく。
まだ今日は始まったばかりだというのに、天気と比例して低い空気に身震いをして、金吾は首巻を巻き直して駆け出した。






「あれ、喜三太どこかに出掛けるの?」
部屋に戻れば、珍しく布団をたたみ終わった喜三太が今まで遊んでいたのだろう、蛞蝓たちを壷に戻している姿があった。
「あ、金吾おかえりー。うん、今からナメクジさんたちのお散歩だよ」
そういってえへへと笑う喜三太に、はいと空の湯飲みを渡す。
もう片方の手で器用に開いたままだった戸を閉め、食堂でおばちゃんに渡された風呂敷包みを開いた。
「なになにー、あ、お饅頭!」
「さっき食堂に寄ったらおばちゃんが出来立てのをくれたんだ。多分、今日のおやつだと思うよ」
だから、出来立てはしんべエたちには内緒ね、と指を口に当てると、喜三太も嬉しそうにしぃーっと指を立てる。
「はい、湯呑み出して。お茶入れるから」
「うん、ありがとう!あ、でもなめさんたち戻さないと」
「あとでいいよ。それより、どこまで行くつもりだったの?」
差し出される湯呑みにやかんを傾けると、湯気と共にこぽこぽとお茶が注ぎ込まれた。
「まだ熱いから気をつけて」
「うん。今日天気いいから裏裏山まで行ってみようかなーって。あそこなら葉っぱもいっぱいあるし、なめさんたち大好きだから」
「裏裏山まで行くの?もうすぐお昼になるのに」
「食堂のおばちゃんにお弁当お願いしたから大丈夫。金吾も一緒に行く?」
それはかなり惹かれるお誘いではあるが、今し方体力を使ってきたばかりで更に裏裏山まで出向くのは、いくら普段委員会で行き慣れた場所とはいえ勘弁してもらいたい。
更に言うなら、昼過ぎからその委員会が、待っているのだから。
「僕はいいよ、今帰ってきたばかりだから。それより外結構寒いから、出掛けるなら暖かい格好して行きなよ」
「うん」
「あと、あんまり遅くならないようにね。裏裏山は一般の人も通る道だから、何が出るか分かんないし。それに今日はきっと夕刻になったらもっと冷えるよ」
「分かってるよー。もう、金吾は心配性だなー」
そりゃまあ、普段からぽやっとしてる誰かさんと一緒にいれば、嫌でも心配性になりますよ。
思わず口から出掛かった言葉寸でで押さえ込み、湯呑みに残ったお茶と共に飲み込んだ。
「それにしんべエと平太が一緒に行ってくれるから大丈夫だよ」
「ほえ?しんべエたちも行くの?」
「うん、昨日の委員会の時約束したんだ。今日天気よかったら一緒に行こうねって」
成る程だから今日は珍しく早起きなんだなと納得する。


なんだ、だったら最初から自分など誘わずに、一緒に行く相手がいるんじゃないか。


そんな思いがふと過ぎり、自分でも気付かず内に金吾は軽く頬を膨らませた。
「金吾も一緒に行くよって言ってたんだけど、疲れてるならしょうがないよねー」
ざんねんーといつもの笑顔に眉を寄せられて、その表情に胸がどきりとざわついた。
同時に、さっきまでこみ上げていたむかむかがスッキリしていて、金吾は首を傾げる。
「あれ?」
「どうしたのー?」
「う、ううん、なんでもない。それより早くしないと」
「あ、そっか」
ご馳走様と空になった湯呑みを床に置き、放置状態だった(よくよく見ればさっきより酷い状態に散乱しているのは気のせいなのかなと思うが敢えて気にしない)蛞蝓たちへと戻る。
「お待たせナメクジさんたち。金吾が心配するから早く行こうね」
そうだよ早く行って帰ってきなよ。大体折角今日はずっと遊べると思ったのに、と自分の朝の日課を棚に上げて金吾は空になった自分の湯呑みにコポコポとお茶を注ぎ足す。
「ほら、ナメ千代ナメ丸ナメ五郎、おうちに入って~」
やはり慣れているだけあって手際よく数匹のナメクジを壷に戻しているのを横目で見ながら、それは家だったのかと口に出さずに突っ込む。
「あ、あ、ナメ十ナメ蔵ナメ左ェ門、駄目だって喧嘩しちゃ~!!もう、連れて行ってあげないよ!」
喧嘩するのか蛞蝓たちも。
どうやって、とゆるゆる動く蛞蝓たちの蠢きながら絡み付き合う姿を想像して、疲れた身体に追い討ちをかけるように脳内が疲れてしまい、考えるのをやめた。
「ナメ松ナメ桜ナメヱ門ナメ秀よしろー、ほら、行くよ」




ぶは!!!!




口に入れたお茶を思い切り噴き出してしまい、金吾はそのまま勢いよく咽た。
「えぇぇえ!!?あれ、金吾ぉ!?」
どうやら変な器官に入ったらしく、咳が一向に納まらない。
とてとてと軽い足取りが近付いてきて、背中を一生懸命撫でる手に、途切れ途切れで「ありがとう」と伝える。
「大丈夫~?」
「だい・・・じょ・・・っ!」
ぶ、と言いたいが、どう見ても大丈夫なわけがない。
心配そうに背中を擦る喜三太に今度こそ大丈夫と告げ、そんなことよりも、と顔を上げた。
「きさ、いま、なん・・・てっ!」
「はにゃ?」
「さっき!!なんて、言ったの!」
「え~?」
撫でる手を押し退けて制すると、喜三太は「えっと~」と口に指を当て思い出す仕種をする。
「金吾大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。じゃなくて!」
「はにゃ?それじゃないの?んじゃあ、金吾は心配性だなー」
何で更に戻るかなと痛む頭を押さえ、そうじゃなくて、とため息混じりに呟いた。
「もっと後。むしろナメクジの名前!」
「えぇえ?今まで興味なかったのに珍しいね~。どうしたの?」
「いいから早く!!」
思わず大きな声で怒鳴ってしまい、喜三太の肩がビクンと揺れた。
それにごめんと謝ってもう一度、今度はなるべく優しく訊ねる。
「教えてよ、なめさんたちの名前」
「う、うん。えっとぉ」
言いながら壷に戻り、指差しで名前を挙げていった。
「ナメ千代ナメ丸ナメ五郎・・・」
先ほど聞いた名前と、まだ聞いてない名前と、何がさっきと違うんだろうな名前とをひーふーみーと一体何匹入ってるんだその中に(聞きたくないし見たくないけど)と言いたくなるくらいの数を数え上げ、それからぁ、いつもの間延びした声で嬉しそうに振り返った。
「これが、よしろー」



いやいやいや待て本当に。



一体いつからソコにいた。
どう考えてもなめ壷の中にはいなかったよな?というか、もしかしなくても最初からそこにいたのか?
蛞蝓相手とはいえ存在すら全く気付かなかったそこは、喜三太の、首の後ろ。
結い上げた髪を捲り上げたソコに、壷の中にいる蛞蝓よりも数倍大きいそれが、喜三太の後ろ首をうぞうぞと這いずっていた。
何でそんなところにという疑問も勿論だが、それよりも何よりもまずは。
「なんで、よしろーなんて名前なのさ」
それに、喜三太の顔が嬉しそうに笑った。
「この間タカ丸さんが襲われた事件があったでしょう?その時来てくれた風魔の先輩」
「与四郎先輩?」
「うん、お土産に持ってきてくれたなめさんが、これなんだよ」
今度はぐるりと首を回りゆったりとした動作で肩に移動していたそれを、優しく撫でながら目を細めて笑う。
それは、遠くにいる尊敬しているんだという人を、語る時と全く同じ顔で。
「この間先輩にお手紙書いたとき、先輩の名前付けたいですって書いたら、嬉しいって言ってくれたから」
「だから、よしろーなんだ?」
「うん、先輩の名前いっぱい呼べるでしょ!」
えへへと笑う顔に、金吾は知らず胸元を強く握り締めた。
「よしろーも連れて行くの?」
「当然だよぉ。よしろーだけ仲間外れは可哀想だもん」
「じゃあ早く壷に戻してあげないと。連れて行けないよ」
ここに木刀がなくてよかった、と金吾はこのときばかりは本気で思った。
普段からそんなに振り回すほうではないが、さも当然のようにそこを自分の居場所とし、いつの間にか肩から腕に移動して頭の触覚で金吾の感触を楽しんでいたそれを切り刻みたい衝動に駆られた。
取り敢えず、握り潰したいと手が出そうになるので自分で自分の腕を押さえ付けてみる。
「しんべエたちも待ってる」
「うーん、でもよしろーは他のなめさんより大きいから、一緒に入れちゃうと中でぎゅうぎゅうになっちゃうんだ」
だから、よしろーだけ僕の肩に乗せて行くんだよ、と綻んだようにに笑う喜三太に、そう、としか返せなくて。
それ以上見ていたくなくて障子に目をやれば、遠くで聞きなれた音が耳に入った。
「気三太、しんべエたちが迎えに来たよ」
「えー?あ、ほんとだ。凄いね金吾!分かるんだー!」
どたどたと忙しなく部屋の前を横切り、障子の前で正面に向いた二人分のシルエットを見て、喜三太が感嘆の声を上げる。
『喜三太ー、遅いよぉ、早くしないとお昼になっちゃうー』
「うん、ごめんね~。もう行くから」
言いながら立ち上がり、壷を抱えて自分の横を通り過ぎて行くその後ろ姿に、ふわりと舞う髪に、思わず手が伸びた。
「いたーい!!」
悲鳴に近い叫び声にはっと気が付けば、いつの間にか自分の手先が喜三太の結い上げている髪を掴んでいて。
「金吾ひどぉい!髪の毛抜けちゃうよー!」
「あ、ごめん!!」
慌てて手を離せば、どうしたの?と上から声が掛かった。
「何が?」
「だって、今日の金吾何か変だよ。ずっと眉毛のところ、しわが寄ってる」
ちょんちょんと眉間を突かれ、痛いからやめてといえばお返しだよと笑われた。
『喜三太ー、まだぁ?』
「あ、ごめん。すぐ行くー」
『うん。あとね、今日は食満先輩と富松先輩も一緒に行ってくれるんだって』
「え、本当!?」
しんべエの言葉に、喜三太の顔がパァッと明るく笑った。
「昨日は駄目だって言ってたのにね!」
『何かね、僕たちと一緒に出かけるために、今日のお仕事昨日のうちに全部しちゃったんだって。さすが六年生だよね。すごいねー』
いや気付くべきはそこじゃないだろ、と一年の自分ですら思うのだが、どうやらその概念は用具委員には存在しないようで、喜三太も壷を抱きしめ「すごいねー」と返していた。
『お弁当も富松先輩がもらってきてくれたよ!だからはやくぅ』
「うん、すぐ行く!」
そういって障子を開けようとするその腕を、金吾が掴んだ。
「金吾?」
「喜三太、上着忘れてる。それからこれも」
今にでも飛び出そうとする喜三太の首に自分が着用していた首巻を外し、喜三太の首に巻いてやる。
「あと、これの残りみんなで食べて」
風呂敷の中に残っていた饅頭をもう一度包み直し、喜三太に手渡す。
「え、いいの?」
「うん。僕はまたおやつにもらうから。先輩たちと一緒に、食べて」
はい、と手の中に納めてやれば、ありがとうと嬉しそうな声が返ってきた。
「それと、」
「うん?」
あぶなかしげに壷を抱え直す腕を手伝ってやりながら、ぼそりと呟く。
「ぼくがもしなめさんとって来たら、喜三太、ぼくの名前・・・付けてくれる?」
真剣なその表情に、気三太はきょとんと金吾の顔を見つめ返した。

そして、ふにゃりと花が咲いたような微笑みが広がった。

「うん、いいよぉ。金吾がいいよって言ってくれるなら、ぼく喜んで金吾の名前付けるー」
それは、いつも見る遠くを思い出す笑みではなく。
目の前にいる自分だけに向けられる笑顔で。
「ほ、んとう?」
「うん、本当!絶対!約束する!金吾の名前のなめさん、大切にする!」
だから待ってるね、と首をこてんと傾けられ、金吾は力いっぱい腕を振った。
「うん、絶対絶対見付けるから!」
だから、と続けようとした言葉を、待ち切れないよと言うしんべエに遮られた。
「ごめん、すぐ行くよ!じゃあね、行ってくる~」
「あんまり遅くならないうちにね」
「大丈夫だよ。だって今日は先輩たちが一緒だもん!」
嬉しそうに笑う声に、今度は胸の痛みなど微塵も感じない。
戸を開け放せば待ってましたとばかりにしんべエが喜三太の手を引き、金吾に行ってくるねと声を掛けて、廊下の向こうに消えていった。
既にいない相手にいつまでも手を振りながら、金吾はへにゃり、とその場に腰を落とした
「・・・ぼくの名前、付けてくれるんだって」
堪らず呟いた言葉は、先程交わした約束で。
「きんごって、呼びかけてくれるんだって」
先輩の名前をたくさん呼べるからと、嬉しそうに言っていたのを思い出す。
だとしたら、喜んで付けてくれるといった自分の名前を呼ぶのも、嬉しいということで。
それを想像して、金吾はふにゃ、と情けなく顔を崩した。
取り敢えず、今度相模に帰ったときは山の中をくまなく探し回ろうと心に誓う。
喜三太の肩に乗っているよしろーなんかよりも、もっともっと大きいのを取ってきて、喜三太に喜んでもらうんだ、と。
そして、自分の名前を、呼んでもらうんだ、と情けない顔に不気味な笑いを付け加えた。



それが実行できたかどうかは、また別の話として。
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