戦国BASARA2の前田慶次受け語りログ。
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これも愚流里のちこさんに捧げさせていただきました。
本当に今3年生が熱くてですね。
いや本命はくくタカなんですが、なんて言うか、次富が本当によくてですね。
これこれこういうのー!!とか日々ちこさんとお話ししてたらいつの間にかアレ・・・?とか・・・。
もう本当、次富ここまで嵌ったのちこさんのせいなんだから!
責任取ってもらわないと!!(意味分かりません)
本当に今3年生が熱くてですね。
いや本命はくくタカなんですが、なんて言うか、次富が本当によくてですね。
これこれこういうのー!!とか日々ちこさんとお話ししてたらいつの間にかアレ・・・?とか・・・。
もう本当、次富ここまで嵌ったのちこさんのせいなんだから!
責任取ってもらわないと!!(意味分かりません)
【おやすみ】
「さくー、手ぇ、つながね?」
「……はぁ?」
新月間近の三日月も既に西に傾き掛け、忍者が忍ぶには頃合のそんな時間帯。
良い子には早いとはあまりにも言い難い薄暗闇の中、そろそろ月の光にも目が慣れてきたかな、と思っていた頃に、突然隣から声がかかった。
「っつーか、お前まだ起きてたのかよ」
自分たちが布団に潜り込んで既に一刻は経っているはず。
そういう自分も、体温を奪って行くだけの布団の冷たさに、眠気が来ないで困ってはいたのだが。
「や、左門まだ帰ってこないし」
「左門は今日は戻れねーだろ。月末だし」
本来ならば3人部屋として宛がわれたこの部屋で、今敷いている布団は二組だけ。
自分と、同じ組の無自覚方向音痴が仲良く布団を並べて潜り込んでいた。
因みに決断力だけの方向音痴は毎月行われる予算会議が間近に迫っているため、今日から徹夜だと嘆いていたのを思い出す。
「っつーかお前、脳内まで迷子になったのかよ?」
冒頭に言われた言葉を思い出し、作兵衛は憐れみの視線を投げ掛けた。
「何でそこで左門の話になるんだよ」
「いやいやいや左門じゃなくてお前の話だこの無自覚方向音痴」
「作もしつこいなー。だから俺は方向音痴じゃないって。ちゃんと毎回学園に帰り付いてんじゃん」
それは俺が毎回迷子になったお前らを探して見つけて縄紐付けて連れて帰ってやってるからだろ!!
思わず喉まで出掛かった言葉を、かたかたと震える障子が現時刻を知らせているようでぐっと飲み込んだ。
代わりに冷える空気にわざわざ腕を出し、目の前の頭に手刀を打ち込んだ。
「った!暴力反対!何すんだよいきなり」
「何でもねーよ。それより何でいきなり手を繋ぐなんて話になんだよ。突拍子がねーんだよお前の話はいっつも」
「えー」
「えーじゃねえ」
不満のような声を上げる三之助に、気持ち悪い声を出すなと言いながら作兵衛は布団の中でもぞもぞと身体を動かした。
「だって、作寒いんだろ?」
「………は?」
「さっきからもぞもぞしてるし。ほら、今だって」
冷える足を擦り合わせていたそれを言い当てられ、思わずびくりと身体を震わす。
「何言って!」
「たまに布団震えてるし」
「な、おま、さっきから!?」
「うん、ずっと見てたけど」
それが何か?とでも言いたげに、三之助はさも当然のように言い放った。
「な…に、見てんだよ!」
「だって隣でもぞもぞされたら気になるだろ?」
「なんねーだろ普通は!!っつーか気になんなら向こう向けよ!!」
「やだよ作見てたいもん」
二人っきりとか滅多にないし。
そう付け加えられ、出掛かった言葉が詰まってしまう。
それから何かを言わねばと右に左に視線を泳がせ、しかし代わりに出てきたのは小さな溜息だけだった。
「……お前って、本当に恥ずかしい奴」
「そっか?それよりほら」
もそりと布団がたくし上がり、目の前に三之助の手が差し出された。
だから何でそういうことにと口に出したいが、目の前の顔が至極真面目に、そしてどことなく嬉しそうな雰囲気を醸し出しているせいで、作兵衛は「仕方ねーな」
と溜息混じりで自分も手を差し出した。
すかさず握り込まれた手に感じるのは、じんわりと暖かい相手のぬくもり。
「うっわ、作の手つめた!」
「うわ、お前の手あったけー」
全く反する言葉を同時に口に出して、お互いがぱちくりと瞬きしあい、どちらともなく吹き出した。
「何だよお前ずりーぞ。何でそんなにあったけーんだ」
「何でって、基礎体温高いからだろ?それより作こそ、こんなに冷たいんなら早く言ってくれればいいのに」
「はぁ?何でお前に言わなきゃなんねーんだよ」
「だってこんなに冷たいなら眠れなくて当然だし。いつもは左門が間にいるから全然気付かなかった」
すり、と今度は両手で握りこまれ、暖めるように手を摺り合わせられて自分の顔がほんのり赤くなるのが分かる。
「気付いてどーすんだよ!っつーか言ってどーすんだよ!」
「え、どうするって」
途端、ぐい、と三之助の手が動いた。
あまりにも突然の、不意を突かれた行動に緩みきっていた作兵衛の身体が、抵抗する暇も与えられず上半身を相手のほうに持っていかれた。
「な…っ!」
文句を言おうと開きかけた口を顔ごと三之助の、胸の中にすっぽりと抱き締められた。
「こうやってさ、くっ付いて寝たら暖かいんじゃないかと思って」
肌を通して響く言葉に、耳どころか全身が赤に染まるのを嫌でも自覚してしまう。
「ほら、暖かくなってきた」
「ちが、これは!!っつーかこんの馬鹿!離しやがれ!!」
「だって離したら作逃げるだろ」
「当たり前だろ!苦しいんだよ馬鹿之助!」
そう怒鳴れば「あ、ごめん」と同時に力を緩められ、その隙に腕から逃げ出し自分の布団に戻ろうとしたが、その腕をまた三之助の方に引き戻され、今度は後ろからすっぽりと抱き締められた。
「~~~っずりーぞお前!!」
「しょうがないじゃん、俺体温高いもん」
「そっちじゃねえ!!」
じゃあ何がと言われた言葉に答える気など起きるはずもなく。
胸の前でしっかとり抱き留められた腕は、日頃の委員会での訓練の賜物なのか、予想以上にがっしりとした筋肉が付いていて。
自分だって普段から重い用具を持ち運びしたり修繕の為に金槌などを振り下ろしたりしているわけだから他の者に比べて筋肉は付いているはずなのに。
それにしてもこの差はなんだろう。
(大体一年の時は俺よりちっちぇー身体してたくせに!いつのまにこんなになってんだよ!)
そう思いながら思わずちらりと後ろを振り返ってしまって、頭ひとつ分上の、三之助とばっちり目が合ってしまって。
「な…んで、こっち見てんだよ!」
「え、だって作可愛いから」
「意味わかんねぇよ!」
「何で?可愛いと見たくなるじゃん。左門も可愛いって言ってたし」
「ますますいみわかんねー!!あいつの方が俺よりちっちぇーだろ!」
何であいつに可愛い呼ばわりされないといけないんだと頭を抱えていたら、その顎に、何の前触れもなく三之助の腕が伸びてきて、そのまま無理やり上を向かされた。
「なんだ…」
顔に掛かる影に、三之助の顔がすぐ近くにあるのを感じて。
気付いたら、触れ合うほど近くに三之助の顔が、目がそこにあって。
思わずその顔面に拳を叩き込んでいた。
「……ってぇ!!いきなりひっでー!!!」
「~~~~~っそれは俺の台詞だばか!!なに、してくれてんだよ!!」
「何って、作さっきから声でかいから黙らせようと思って」
「口で言えー!!」
「こっちの方が早いかなって」
「そういう問題じゃねえだろ!!!もうお前とは寝らねえ!!」
自分の布団に戻ろうとするその身体を、あれだけ力いっぱい殴ったにも関わらず緩むことのない腕によって制される。
「離せよ!」
「離したら作逃げるだろ」
「当たり前だろ!!っつーかさっきと同じやりとりさすな!!」
「だって」
絡めた腕に更に力を込め、すり、と作兵衛の頭に三之助の顔が擦り寄ってきた。
「折角二人きりなのに、離れたら勿体無いだろ」
滅多にないチャンスなのに。
そう言いながら抱き締められ、作兵衛の心臓がどきりと跳ね上がる。
緩むことのないその腕に無意識に手が触れ、きゅっと掴んでため息をひとつ漏らした。
それは諦めなのかはたまた高鳴る鼓動を誤魔化すためかなんて、自分でも分かるはずもなく。
「……もうさっきみたいなこと、すんなよ」
「作が騒いだらまたするかも」
「やっら今度は渾身を込めてぶち込む」
「ごめんなさい。もうしません」
一見細いと見えるその腕に、想像以上の威力があるのだと知っている事を普段から身を持って知っているだけに、それだけは勘弁して欲しいと三之助は素直な謝罪を言葉にする。
それに苦笑して、もぞりと身体を動かした。
「あ、何だよ。逃げないって言ったくせに」
「言ってねーよ。それに逃げないからちょっとだけ離せ」
「えー」
「えーじゃねえ。枕取って来るだけだから」
まさか二人でひとつの枕を使うなどとそんな真似が出来る筈もない。
それ以前に、そんなことことをしてみろ自分の心臓がいくつあっても足りないと作兵衛は聞こえないように呟く。
それに、三之助が再び「えー」と不満を漏らした。
「いらないだろ」
「何でだよ。お前俺に枕なしで寝ろってのかよ」
二人でひとつ、と考えてしまったことは敢えて言わずに。
なのに、三之助はいとも容易く、それの上を行く言葉を言い放った。
「俺の腕、枕にすればいいじゃん」
「……はぁ!?」
「枕なんかあったら作とくっ付けないし。俺は作をぎゅうってしながら寝たいんだけどな」
言いながら更に密着してくる身体に、ぼん、と作兵衛の身体が赤く染まった。
「~~~~~っ!!ぁあもう!!だから何でお前ってそう!」
「何が?」
いいからほら、と緩められた腕と同時に、頭のすぐ上にぱたりとその腕が落ちてくる。
仕方なく三之助の方に向きを変えれば、おいでとばかりに広げられた腕と、胸がそこに。
「……あーもう、何でもいいや…」
本当に仕方なく、今度こそ諦めの溜息を吐いて、作兵衛はその腕の中に自分の身体を潜り込ませた。
「うわ、作の身体つめた」
「お前があったかすぎんだよ」
「そんなことないと思うけどなー。まあいいや、ちょうどいいし」
「何が」
「だっておれの身体が暖かいって事は、いつだって作をこうして暖めてやれるだろ?」
にっこりと微笑むかおに目が見開き、思わずその顔面をばしんと叩いてしまった。
「…ってぇ!」
「……もう、お前黙れ」
「何でだよ。おーぼーだぞ作!」
「いいらか黙れ。オラ、寝るぞ」
赤くなった顔を悟られないようにその胸に顔をうずめて、目の前の合わせ目をぎゅっと掴む。
それに気を良くしたのか、三之助も作兵衛の背中を抱き込み、髪の毛に顔を埋めた。
「おやすみ、さくべ」
「んー、お休み」
とくりとくりと肌を通して伝わる鼓動に意識を持っていかれ、頬に、額に、何かが触れる気配したような気がするが、それを確認するけの意識が、作兵衛には既に残っていなかった。
次の日、仲良く同じ布団の中で丸くなっている二人を見つけ、「ずるいぞー!!」と飛び込んできた左門の叫び声と、次いで作兵衛の悲鳴と怒鳴り声が三年長屋に響いたのは、言うまでもない。
「さくー、手ぇ、つながね?」
「……はぁ?」
新月間近の三日月も既に西に傾き掛け、忍者が忍ぶには頃合のそんな時間帯。
良い子には早いとはあまりにも言い難い薄暗闇の中、そろそろ月の光にも目が慣れてきたかな、と思っていた頃に、突然隣から声がかかった。
「っつーか、お前まだ起きてたのかよ」
自分たちが布団に潜り込んで既に一刻は経っているはず。
そういう自分も、体温を奪って行くだけの布団の冷たさに、眠気が来ないで困ってはいたのだが。
「や、左門まだ帰ってこないし」
「左門は今日は戻れねーだろ。月末だし」
本来ならば3人部屋として宛がわれたこの部屋で、今敷いている布団は二組だけ。
自分と、同じ組の無自覚方向音痴が仲良く布団を並べて潜り込んでいた。
因みに決断力だけの方向音痴は毎月行われる予算会議が間近に迫っているため、今日から徹夜だと嘆いていたのを思い出す。
「っつーかお前、脳内まで迷子になったのかよ?」
冒頭に言われた言葉を思い出し、作兵衛は憐れみの視線を投げ掛けた。
「何でそこで左門の話になるんだよ」
「いやいやいや左門じゃなくてお前の話だこの無自覚方向音痴」
「作もしつこいなー。だから俺は方向音痴じゃないって。ちゃんと毎回学園に帰り付いてんじゃん」
それは俺が毎回迷子になったお前らを探して見つけて縄紐付けて連れて帰ってやってるからだろ!!
思わず喉まで出掛かった言葉を、かたかたと震える障子が現時刻を知らせているようでぐっと飲み込んだ。
代わりに冷える空気にわざわざ腕を出し、目の前の頭に手刀を打ち込んだ。
「った!暴力反対!何すんだよいきなり」
「何でもねーよ。それより何でいきなり手を繋ぐなんて話になんだよ。突拍子がねーんだよお前の話はいっつも」
「えー」
「えーじゃねえ」
不満のような声を上げる三之助に、気持ち悪い声を出すなと言いながら作兵衛は布団の中でもぞもぞと身体を動かした。
「だって、作寒いんだろ?」
「………は?」
「さっきからもぞもぞしてるし。ほら、今だって」
冷える足を擦り合わせていたそれを言い当てられ、思わずびくりと身体を震わす。
「何言って!」
「たまに布団震えてるし」
「な、おま、さっきから!?」
「うん、ずっと見てたけど」
それが何か?とでも言いたげに、三之助はさも当然のように言い放った。
「な…に、見てんだよ!」
「だって隣でもぞもぞされたら気になるだろ?」
「なんねーだろ普通は!!っつーか気になんなら向こう向けよ!!」
「やだよ作見てたいもん」
二人っきりとか滅多にないし。
そう付け加えられ、出掛かった言葉が詰まってしまう。
それから何かを言わねばと右に左に視線を泳がせ、しかし代わりに出てきたのは小さな溜息だけだった。
「……お前って、本当に恥ずかしい奴」
「そっか?それよりほら」
もそりと布団がたくし上がり、目の前に三之助の手が差し出された。
だから何でそういうことにと口に出したいが、目の前の顔が至極真面目に、そしてどことなく嬉しそうな雰囲気を醸し出しているせいで、作兵衛は「仕方ねーな」
と溜息混じりで自分も手を差し出した。
すかさず握り込まれた手に感じるのは、じんわりと暖かい相手のぬくもり。
「うっわ、作の手つめた!」
「うわ、お前の手あったけー」
全く反する言葉を同時に口に出して、お互いがぱちくりと瞬きしあい、どちらともなく吹き出した。
「何だよお前ずりーぞ。何でそんなにあったけーんだ」
「何でって、基礎体温高いからだろ?それより作こそ、こんなに冷たいんなら早く言ってくれればいいのに」
「はぁ?何でお前に言わなきゃなんねーんだよ」
「だってこんなに冷たいなら眠れなくて当然だし。いつもは左門が間にいるから全然気付かなかった」
すり、と今度は両手で握りこまれ、暖めるように手を摺り合わせられて自分の顔がほんのり赤くなるのが分かる。
「気付いてどーすんだよ!っつーか言ってどーすんだよ!」
「え、どうするって」
途端、ぐい、と三之助の手が動いた。
あまりにも突然の、不意を突かれた行動に緩みきっていた作兵衛の身体が、抵抗する暇も与えられず上半身を相手のほうに持っていかれた。
「な…っ!」
文句を言おうと開きかけた口を顔ごと三之助の、胸の中にすっぽりと抱き締められた。
「こうやってさ、くっ付いて寝たら暖かいんじゃないかと思って」
肌を通して響く言葉に、耳どころか全身が赤に染まるのを嫌でも自覚してしまう。
「ほら、暖かくなってきた」
「ちが、これは!!っつーかこんの馬鹿!離しやがれ!!」
「だって離したら作逃げるだろ」
「当たり前だろ!苦しいんだよ馬鹿之助!」
そう怒鳴れば「あ、ごめん」と同時に力を緩められ、その隙に腕から逃げ出し自分の布団に戻ろうとしたが、その腕をまた三之助の方に引き戻され、今度は後ろからすっぽりと抱き締められた。
「~~~っずりーぞお前!!」
「しょうがないじゃん、俺体温高いもん」
「そっちじゃねえ!!」
じゃあ何がと言われた言葉に答える気など起きるはずもなく。
胸の前でしっかとり抱き留められた腕は、日頃の委員会での訓練の賜物なのか、予想以上にがっしりとした筋肉が付いていて。
自分だって普段から重い用具を持ち運びしたり修繕の為に金槌などを振り下ろしたりしているわけだから他の者に比べて筋肉は付いているはずなのに。
それにしてもこの差はなんだろう。
(大体一年の時は俺よりちっちぇー身体してたくせに!いつのまにこんなになってんだよ!)
そう思いながら思わずちらりと後ろを振り返ってしまって、頭ひとつ分上の、三之助とばっちり目が合ってしまって。
「な…んで、こっち見てんだよ!」
「え、だって作可愛いから」
「意味わかんねぇよ!」
「何で?可愛いと見たくなるじゃん。左門も可愛いって言ってたし」
「ますますいみわかんねー!!あいつの方が俺よりちっちぇーだろ!」
何であいつに可愛い呼ばわりされないといけないんだと頭を抱えていたら、その顎に、何の前触れもなく三之助の腕が伸びてきて、そのまま無理やり上を向かされた。
「なんだ…」
顔に掛かる影に、三之助の顔がすぐ近くにあるのを感じて。
気付いたら、触れ合うほど近くに三之助の顔が、目がそこにあって。
思わずその顔面に拳を叩き込んでいた。
「……ってぇ!!いきなりひっでー!!!」
「~~~~~っそれは俺の台詞だばか!!なに、してくれてんだよ!!」
「何って、作さっきから声でかいから黙らせようと思って」
「口で言えー!!」
「こっちの方が早いかなって」
「そういう問題じゃねえだろ!!!もうお前とは寝らねえ!!」
自分の布団に戻ろうとするその身体を、あれだけ力いっぱい殴ったにも関わらず緩むことのない腕によって制される。
「離せよ!」
「離したら作逃げるだろ」
「当たり前だろ!!っつーかさっきと同じやりとりさすな!!」
「だって」
絡めた腕に更に力を込め、すり、と作兵衛の頭に三之助の顔が擦り寄ってきた。
「折角二人きりなのに、離れたら勿体無いだろ」
滅多にないチャンスなのに。
そう言いながら抱き締められ、作兵衛の心臓がどきりと跳ね上がる。
緩むことのないその腕に無意識に手が触れ、きゅっと掴んでため息をひとつ漏らした。
それは諦めなのかはたまた高鳴る鼓動を誤魔化すためかなんて、自分でも分かるはずもなく。
「……もうさっきみたいなこと、すんなよ」
「作が騒いだらまたするかも」
「やっら今度は渾身を込めてぶち込む」
「ごめんなさい。もうしません」
一見細いと見えるその腕に、想像以上の威力があるのだと知っている事を普段から身を持って知っているだけに、それだけは勘弁して欲しいと三之助は素直な謝罪を言葉にする。
それに苦笑して、もぞりと身体を動かした。
「あ、何だよ。逃げないって言ったくせに」
「言ってねーよ。それに逃げないからちょっとだけ離せ」
「えー」
「えーじゃねえ。枕取って来るだけだから」
まさか二人でひとつの枕を使うなどとそんな真似が出来る筈もない。
それ以前に、そんなことことをしてみろ自分の心臓がいくつあっても足りないと作兵衛は聞こえないように呟く。
それに、三之助が再び「えー」と不満を漏らした。
「いらないだろ」
「何でだよ。お前俺に枕なしで寝ろってのかよ」
二人でひとつ、と考えてしまったことは敢えて言わずに。
なのに、三之助はいとも容易く、それの上を行く言葉を言い放った。
「俺の腕、枕にすればいいじゃん」
「……はぁ!?」
「枕なんかあったら作とくっ付けないし。俺は作をぎゅうってしながら寝たいんだけどな」
言いながら更に密着してくる身体に、ぼん、と作兵衛の身体が赤く染まった。
「~~~~~っ!!ぁあもう!!だから何でお前ってそう!」
「何が?」
いいからほら、と緩められた腕と同時に、頭のすぐ上にぱたりとその腕が落ちてくる。
仕方なく三之助の方に向きを変えれば、おいでとばかりに広げられた腕と、胸がそこに。
「……あーもう、何でもいいや…」
本当に仕方なく、今度こそ諦めの溜息を吐いて、作兵衛はその腕の中に自分の身体を潜り込ませた。
「うわ、作の身体つめた」
「お前があったかすぎんだよ」
「そんなことないと思うけどなー。まあいいや、ちょうどいいし」
「何が」
「だっておれの身体が暖かいって事は、いつだって作をこうして暖めてやれるだろ?」
にっこりと微笑むかおに目が見開き、思わずその顔面をばしんと叩いてしまった。
「…ってぇ!」
「……もう、お前黙れ」
「何でだよ。おーぼーだぞ作!」
「いいらか黙れ。オラ、寝るぞ」
赤くなった顔を悟られないようにその胸に顔をうずめて、目の前の合わせ目をぎゅっと掴む。
それに気を良くしたのか、三之助も作兵衛の背中を抱き込み、髪の毛に顔を埋めた。
「おやすみ、さくべ」
「んー、お休み」
とくりとくりと肌を通して伝わる鼓動に意識を持っていかれ、頬に、額に、何かが触れる気配したような気がするが、それを確認するけの意識が、作兵衛には既に残っていなかった。
次の日、仲良く同じ布団の中で丸くなっている二人を見つけ、「ずるいぞー!!」と飛び込んできた左門の叫び声と、次いで作兵衛の悲鳴と怒鳴り声が三年長屋に響いたのは、言うまでもない。
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