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戦国BASARA2の前田慶次受け語りログ。
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ちこさんに捧げさせていただいた藤数SSです。
もう本当、私何で相変わらずこんな駄文しか書けなく・・・っ!
もっと精進しようと思います。


っつーか、藤数は切ない系でいいよね!っつーか切ないのが本当に似合うよね!!


っつーか、3年生は可愛いよね!!(お前結局それが言いたかったんだろ)











ドスン、と勢いよく部屋の障子の前で盛大な音が響き、驚いてそちらに目をやれば蠢く黒い影がもそもそと立ち上がろうとしていた。
なに、と思うことよりもまず、ああまたか、と藤内は溜息を吐き、もうすぐ起こるであろう嵐に備えて読みかけていた本をぱたりと閉じる。
影は二度三度その場で躓き、確か自分が入る前に石なんかは全部取り払っていたはずなのに何で何もないところでこけるかな、と思わずこめかみに手をやる。
しん、と静かになった直後、外れるのではないかというくらい激しい音を立てて障子が左右に開き、仁王立ちで数馬がそこに立っていた。
「今度はどうしたんだよ」
頭にこぶが付いているのは先程部屋の前でこけた時にこさえた物だな。痛みが長引かないうちに後で湿布でも用意しないと、と思っていると、数馬からひくりと嗚咽が漏れ、次の瞬間には大声を上げて藤内の足元に崩れ落ちた。
「もおおぉおう!!!聞いてよとーないー!!!みんな酷いんだよ!僕今までずっとみんなと一緒にいたのに!保健室でみんなと仕事してたのに!!3年生までずっと保健委員だったのに!」
「うん、それで?」
「みんな酷いんだよ!善法寺先輩なんかもっと酷いんだよー!!!」
「うんうん、どうしたの」
ぽんぽんと背中を叩いて先を促せば、がばりと顔を上げて更に声を上げて泣き出した。
「僕の顔見た瞬間、みんな揃って「君誰?」って聞くんだよー!!!今までずっと一緒にいたのに!保健委員としてみんなの怪我治療してたのに!初めて会うような言い方するんだよー!!!」
うわあぁぁあん!!と顔中を涙でぐしゃぐしゃにして泣き喚く数馬の背中を抱き締め、頭を抱えて撫でると幾分落ち着いたのかすんすんと鼻を鳴らして「ごめん」と呟きが聞こえた。
「落ち着いた?」
「うん、ごめんねいきなり泣いちゃったりして」
「いいよ、いつものことだから」
そう言えば治まっていた涙がまた目元に溜まりだし、藤内は慌てて頭を撫でた。
「だってホラ、昨日だって綾部先輩が掘った蛸壺にはまってたし」
「うん、善法寺先輩と一緒に落ちて、深いねどうしようって悩んでたんだ、善法寺先輩と一緒に」
「・・・・・・一昨日も廊下に落し紙ぶちまけて転んで泣いてたし?」
「左近と一緒に厠点検しててる途中で左近が転んで、それに僕が躓いたんだ。左近の足に」
「・・・・・・えぇっと、確か今日も」
「授業終わってから乱太郎と伏木蔵に包帯の巻き方教えてたんだけどね。みんなが集まる前に」
「あー、うん、何て言うかね」
それはもう、保健だからとか不運だからとかいう問題ではないような機がするぞ、と思うが、口に出してしまえば更に沈めてしまうことになるのは目に見えているので、敢えて言わない。
毎日のように保健室にいて、更にあの保健委員を3年も勤め上げているにも関わらず「誰?」は確かに酷いと思う。
「何でかなー・・・僕ってそんなに存在感薄いのかなぁ・・・?」
すん、ともう一度鼻を鳴らし、目元に雫の溜まった顔で見上げられ、鼓動が一瞬跳ね上がった。
「や、そんなことは、ない、と思う、けど」
「でもよくよく思い出したら、僕先輩とか下級生から一回も名前呼ばれたことない気がする・・・」
脈打つ心臓に静まれと願うが、ふわふわと柔らかい数馬の髪を撫で付けるたびに鼓動は更に早まるばかりで。
だから、一瞬思考が緩んでしまっていた。
それはまあ、なんというか、と呟き。



「仕方ないよ、だって数馬は空気と同じだから」



言ってしまって、あ、と口を押さえるがその時は既に遅かった。
瞳いっぱいに藤内を捕らえていた目元が見る見るうちに潤んで、ぽたりと畳の上に大きな染みを作った。
「藤内、僕のことそんな風に思ってたんだ・・・」
「や、ちがくて!そうじゃなくて!!」
慌てて目の前で手を交差させてその肩を掴もうとして、パシリと数馬の手によって遮られた。
「何が違うんだよ!もういいよ!!藤内の馬鹿ー!!!!」
再び大声を上げて障子を開けて出て行ったその直後で、ドスンと何かにぶつかり次いで床に転げる音が響く。
「ぉわ!どこ見てんだよ!って、数馬!?何泣いてんだよお前!?」
「うわああぁん!作ちゃあぁぁあん!!!」
更に床に倒れる音が続いたということは、たまたまそこを通りかかった作兵衛に数馬が勢い余って飛びついて、二人揃って転げたというところか、とどこか冷静な頭が判断をする。
(いや、そうじゃなくて)
掴み損ねた手を自身に戻し、ぐっと握り締めてそれを自分の額にこつりと当てる。
(何、言ってんだ、俺は)
言いたかったことは、そういう事じゃなくて。
空気とは、全然違う意味で。
(数馬は空気と同じくらい、大切だよって、そういうことなんだけど)
保健委員にとって数馬は空気と同じくらい、そこにいて当たり前の存在だから、誰も気になんかしなかったんだよと言いたかったのに。
それは無論、保健委員会だけでなく、いやそれ以上に自分にとっても大切な存在なんだと、そう続けたかったのに。


(結局、伝えたかった言葉、ひとつも伝わらなかったな)


分かったからと宥める作兵衛の声と、鼻を鳴らす数馬の声を耳の端に捉えながら、藤内は大きく溜息を吐いた。
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